少年漫画・その他」カテゴリーアーカイブ

蟲師 Mushishi

アフタヌーンで連載されていた、漆原友紀による蟲師の英語版コミックです。全10巻。また 蟲師の北米版アニメDVD もあります。

蟲師 Mushishi 英語版コミック

蟲師 日本語オリジナル版

蟲師 英語版

この作品は独特の世界感をもっていて、とても不思議な、そしていてノスタルジックな気持ちにさせられますね。作者いわくイメージは、「鎖国を続けた日本」、もしくは「江戸期と明治期の間にある架空の時代」だそうで、ありそうでありえなかった、それでいて日本人の心に訴えかける架空の世界を作り出しています。

いわゆる怪異を扱ったものでありながらこの作品に登場する “蟲” は、積極的に人に害を為す妖怪や怪物とは違って、それ自体には人間的な思考というものは感じられず、単細胞生物のように原始的な本能に従って行動しています。ギンコが捕まえようとすると逃げようとしたり、養分を得るために人にとりついたりするので、生存本能や食欲などの基本的な欲求はあるようですが、それ以上の目的みたいなものは持ち合わせていません。蟲の通り道である光脈というのはおそらく陰陽道や風水でいうところの龍穴や龍脈のようなものだと思いますが、そういう点から蟲の存在は日本的というより大陸的な感じがします。別の言い方をすると民俗学的というより哲学的な感じですね。昔話のように子供に教訓や生活の知恵を与えるという感じではなく、大人がじっくりと考えさせられるような感じです。

現代に生きる我々がこの作品に不思議なノスタルジィを感じるのは、単純に昔の風景を描くという時代設定の問題ではなく、「ありえるはずだった現在」についての想像をかきたてられるからではないでしょうか。

ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE- Tsubasa

週刊少年マガジンで連載されていた、CLAMPによるツバサ -RESERVoir CHRoNiCLE-(レザヴォア クロニクル)の英語版コミックです。全28巻。英語リスニング力を強化したい方には、ツバサ・クロニクルの北米版アニメブルーレイもあります。

ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE- Tsubasa 英語版コミック

ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE- 日本語オリジナル版

ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE- 英語版

意外と、と言うとファンの人には怒られるかも知れませんが、CLAMPという漫画家集団さんは少女漫画だけでなく少年漫画の作品も多いですよね。三人よれば文殊の知恵という言葉もありますが、それだけ創作の幅が広いという事でしょうか。でもCLAMPの場合はそれぞれが個別に漫画を描くスタイルの藤子不二雄とは違って役割分担がはっきりしているそうですが、どのように創作のアイデアを生み出しているのか興味があるところです。

また手塚治虫のようにスターシステムを使用しているので、まったく別の世界観をもった作品にキャラクターだけが共通して登場したりもします。前述のように少年漫画・少女漫画の区別なくさまざまな作品を作りだしているので、読者の方もそういう枠にとらわれずに作品を読めるようになるのかも知れませんね。いずれにせよ才能豊かな人たちのようですから、今後もヒット作を出し続ける事でしょう。

結界師 Kekkaishi

サンデーで連載中の田辺イエロウによる結界師の英語版コミックです。

結界師 Kekkaishi 英語版コミック

結界師 日本語オリジナル版

結界師 英語版

海外、とくにアメリカなどで人気があるのはサムライやニンジャですが、この作品のように和風の呪術を使う退魔師みたいなのってどうなんでしょうかね?日本じゃ海外の魔法使いみたいなのはファンタジー世界でかなりの人気がありますけど、エクソシストはそれほどでもないような気がします。逆に考えてみると、海外の人たちにとってはニンジャが体術だけじゃなく妖術も使うオールラウンダーなのかも知れませんね。

この作品の場合はタイトルどおり結界師という事ですが、なんとなく陰陽道や密教に西洋呪術などを加えてオリジナルの呪術を生み出しています。悪く言えばいい加減なのですが、そこは創作における自由度のためには仕方がありません。本格的にその辺を描写しようとすれば、漫画というより小説で書いた方が良いような気がします。

NHKにようこそ! Welcome to the NHK

滝本竜彦氏の原作小説を元に、大岩ケンヂが漫画化した人気コミック、NHKにようこそ!の英語版です。アニメ化もされて人気となりましたね。著者名に作画担当の大岩 ケンヂ(Kendi Oiwa)氏の名前がある方がコミックスとなります。またNHKにようこそ!の北米版アニメDVDもあります(※リージョンコードに注意)。

NHKにようこそ! Welcome to the NHK 英語版ライトノベル&コミック

NHKにようこそ! 日本語オリジナル版

NHKにようこそ! 英語版

この作品のタイトルを見たとき、日本放送協会のNHKをまず最初に想像したのは自分だけではないでしょう。実際はみなさんご存知の通り「日本ひきこもり協会」の略です。現在でも社会問題のひとつになっているひきこもり問題を扱った珍しい作品ですね。

ただ作品全体を通してみると、ひきこもりという個別の問題というよりも様々な精神的な病を通じて斬新な世界観を作り出しているように思えます。主要な登場人物はそれぞれに心の病気をかかえています。そこには一般的な作品のように「頼れる人間」が存在しないので、心の病気を抱えたもの同士で支えあったり傷つけあったりしながら話が進んでいきます。本来ならばこんな状況にならないように周囲の人間がなんとかするように思いますが、心の病気の話題をタブー視しがちな日本においてはそれほど非現実的な状況ではないような気もします。

登場人物たちにあまり感情移入して読むと、ちょっといたたまれない気持ちになりますね。

火の鳥 Phoenix

漫画の神様、手塚治虫の不朽の名作。人間の業と生と死を描いた火の鳥の英語版コミックです。一部を除いてほとんどが一巻完結なので英語版コミックの入門用として良いかと思います。また珠玉の名作なので日本語版もぜひ揃えたいものです、セットでの購入をオススメします。

火の鳥 Phoenix 英語版コミック

火の鳥 日本語オリジナル版

火の鳥 全13巻セット 日本語版

火の鳥 英語版

この作品がいかに素晴らしいかは、ぜひ読んでみてくださいとしか言えません。多少難しいテーマを扱っているので気楽に読める娯楽作品という感じではありませんが、日本人の根底に流れる死生観を見事に描いているので、じっくり読んで思索にふけるにはもってこいの作品です。

最近知ったのですが、この作品は未完なのですね。ひとつひとつのお話が見事に完成されているので、まだ未完成だったなんてこれまで思いもしませんでした。ちなみに予定されていたお話としては、日中戦争の頃の中国を舞台にした “大地編”、不死のロボットとしての鉄腕アトムの外伝を描く “アトム編”、そして完結編となる “現代編” の三作があったそうです。中でも完結編はぜひ読みたかったですね。

この作品の英語版の出版が完了したのはつい最近の2008年の事です。出版の都合上日本のオリジナル版とは、巻ごとの収録話が違うので以下に見やすい表を作りました。

  • Vol.1 Dawn – 黎明編
  • Vol.2 Future – 未来編
  • Vol.3 Yamato / Space – ヤマト編 / 宇宙編
  • Vol.4 Karma – 鳳凰編
  • Vol.5 Resurrection – 復活編
  • Vol.6 Nostalgia – 望郷編
  • Vol.7 Civil War, Part 1 – 乱世編
  • Vol.8 Civil War, Part 2 / Robe of Feathers – 乱世編 / 羽衣編
  • Vol.9 Strange Beings / Life – 異形編 / 生命編
  • Vol.10 Sun, Part 1 – 太陽編
  • Vol.11 Sun, Part 2 – 太陽編
  • Vol.12 Early Works – 初期短編集

漂流教室 The Drifting Classroom

週刊少年サンデーで連載されていた、楳図かずおの名作漫画、漂流教室の英語版コミックです。今読んでも怖さが色あせませんね。全11巻。

漂流教室 The Drifting Classroom 英語版コミック

漂流教室 日本語オリジナル版

漂流教室 英語版

最近ではワイドショーの話題になったり、バラエティ番組に出演したりして、そちらの方が有名となった感がある楳図かずお氏ですが、この作品を読めば氏が漫画家としていかに優れた人であるか解ると思います。科学的考証をすれば荒唐無稽な描写もありますが、人間が感じる恐怖というものについて直感的に理解している方なのでしょう。むしろよく少年誌で連載ができたなと思うほどに、今読んでも怖い作品です。小さい頃に読んだらトラウマになっていた様な気がします。

残念ながらアニメ化はされてないですが、テレビドラマ化が一回、映画化が二回されています。さらに残念な事にそのいずれも脚本や設定が大幅に変更されてしまっているので、原作の持つ恐怖があまり伝わらない結果となってしまっています。これだけ完成された物語なのにどうして手を加える必要があるのか意味が解りません。まあ大人の事情というやつなのでしょうが、できれば完全な形のアニメーションを見てみたい気がします。きっと今でも十分に通用する作品ができるでしょう。

スズナリ! Suzunari!

まんがタイムきららMAXで連載されていた石見翔子の4コマ漫画、スズナリ!の英語版コミックです。冊数が少ないのでちょっと英語版コミック読んでみたいという方にちょうど良いかも知れません。全2巻です。

スズナリ! Suzunari! 英語版コミック

スズナリ! 日本語オリジナル版

スズナリ! 英語版

私は4コマ漫画が大好きなのでまんがタイムきらら系の作品を英語化して発売してくれている Yen Press にはとても感謝しています。また4コマ漫画は普通の漫画作品に比べて、セリフが短いものが多く、またストーリーを追う必要が無いので、英語版コミック入門用として最適です。特にこの作品は全2巻という短さなので、ちょっと挑戦してみようという方にぴったりです。できれば日本語のオリジナルを誌面でも単行本でもいいので読んだ後で、英語での漫画を読む事にトライしてください。

しかし鈴のような美少女にネコの様になつかれるというのは、うらやましい限りですね。実際のネコはもうちょっと自由奔放な気もしますが、仔猫のうちはあまえんぼうで飼い主にべったりですから、鈴の中身はまだ仔猫なのかも知れません。結構好きな作品だったので、もうちょっと長く連載をして欲しかったですね。

はだしのゲン Barefoot Gen

日本の漫画の中で最も多くの海外の人たちに読んでもらいたい漫画です。できれば図書館などにおいてもらいたいものです。知り合いに英語圏の方がいたら薦めて下さい。全10巻です。

はだしのゲン Barefoot Gen 英語版コミック

はだしのゲン 日本語オリジナル版

はだしのゲン 英語版

2007年にウィーンで行われた核拡散防止条約運用検討会議の第1回準備委員会で日本政府代表団がこの作品の英語版を加盟国に配布した事が報道されましたね。その他、フランス語版、ドイツ語版、イタリア語版、朝鮮語版、ロシア語版、スペイン語版、インドネシア語版、タイ語版、エスペラント版、ノルウェー語版などが翻訳されて出版されているそうです。

ただどうしても作者のイデオロギー的な側面が強いのと、教育的な印象が強いためか、諸外国で好まれて読まれているという訳では無いようです。海外の方に薦める時には、漫画の持つ娯楽的な部分と、表現の手段としての漫画の違いを考慮した上でないと逆効果になるかも知れませんね。

個人的には表現の手段としての漫画という意味では、この作品ほど作者の情念というか怨念のようなものが、作画によく表れている作品は無いような気がします。原爆の体験をつづった小説や自伝などは他にもたくさんありますが、それらの作品をもとに他の漫画家が漫画化してもこの作品ほどの迫力にはならないでしょう。作者の中沢啓治氏は自分の思いを読者に完全に伝えるため、この作品をアシスタントを一切使わず全て自分で描き上げたそうです。そういう意味では、芸術的にピカソのゲルニカに匹敵すると言うのは過大評価でしょうか?

1ポンドの福音 One-Pound Gospel

つい最近テレビドラマでも放送されましたね、ヤングサンデーで連載されていた高橋留美子による1ポンドの福音の英語版コミックです。全4巻なので英語版コミックの入門用として良いかと思います。

1ポンドの福音 One-Pound Gospel 英語版コミック

1ポンドの福音 日本語オリジナル版

1ポンドの福音 英語版

結構懐かしい作品ですよね。上記の通りお話が短いので、英語版コミックが初めてという方におすすめしたい作品です。英語を学びなおそうと思い立ったが、どこから手をつけたらいいか解らないという方に、とりあえず昔を懐かしみながらこの作品を読んでいただきたいと思います。またKAT-TUNの亀梨和也君の主演によりテレビドラマ化もされましたので、こちらで作品を気に入って、原作漫画にも興味を持ったという学生さんにもちょうどいいかも知れません。

しかし高橋留美子という漫画家さんは本当に才能がありますよね。ボクシング漫画といえば熱血な少年漫画の独壇場と思われていたのに、それまでの常識を打ち破って恋愛要素を取り入れて新しいストーリーを作り出してしまいました。スポコン漫画のカタルシスが好きな人には物足りないでしょうが、逆にそういうのを見飽きた読者にとっては新鮮な衝撃を与えました。多少ギャグ要素でお茶をにごしている部分もありますが、そこら辺はうる星以来の作者の持ち味でしょう。

ひだまりスケッチ Sunshine Sketch

アニメ化もされた蒼樹うめによる萌え系4コマ漫画、ひだまりスケッチの英語版コミックです。4コマ漫画ということで英語版コミック入門用としてちょうど良いのではないでしょうか? またひだまりスケッチの北米版アニメブルーレイもあります(※国コード規制に注意)。

ひだまりスケッチ Sunshine Sketch 英語版コミック

ひだまりスケッチ 日本語オリジナル版

ひだまりスケッチ 英語版

けいおん!といいこの作品といい、最近はまんがタイムきらら系の作品のアニメが強いですね。バトル系の作品とかと違って特にストーリーの流れとか無いのに、アニメが二期、三期と続いています。ストーリーがないから途中から見ても大丈夫というのもあるのかも知れません。

また上述の通り、4コマ漫画は英語版コミック入門用としておすすめです。ストーリーを追う必要がないので、あいまいな理解でも読み進められる点や、巻数が少ないので長編に比べて読破が楽だからです。長いセリフもありませんですしね。ただそれだけに 1コマ1コマ の絵が重要になるのですが、元々日本人向けに暗黙の了解の内に描かれている作品なので、文化的背景などの説明をしなければならない英語版の訳者さんは結構大変かも知れません。そういったセリフ外の補足説明なんかを注意して読むと、より一層勉強になりますよ。