FEEL YOUNGにて連載されていた、宇仁田ゆみによるうさぎドロップの英語版コミックです。本編9巻+番外編1巻の全10巻。
30歳の独身サラリーマン・河地大吉は、祖父が亡くなって葬儀に訪れた祖父の家で6歳の少女・鹿賀りんと出会う。りんは祖父の隠し子で、親族一同は話し合いでりんを施設に入れようとするのだが、これに反発した大吉は勢いでりんを引き取り自分の家で養う事となる。こうして不器用な男としっかり者の少女の不思議な共同生活が始まった…という感じの作品です。アニメ化や映画化もされましたので、そちらで知っているという方も多いと思われます。
英語版は北米翻訳漫画出版社大手の Yen Press (Orbit) より全10巻にて発売されています。子育てがテーマという事もあり、家庭生活に密着した英語を学ぶのに最適な作品となっています。カバーデザインもおしゃれなので、友人やお子さんへのプレゼントとしても最適ではないでしょうか。
またアメリカのAmazonのレビューではこの作品に対して以下のような感想が寄せられています。
第1巻
Ellen W:☆☆☆☆☆
“本当のしあわせ”~前略~
私はこの漫画作品が大好きです。まず登場人物が素晴らしい。ダイキチは普通の男性ですが、りんを引き取るために自分の生活が変わってしまう事をいとわない大きな度量を持っています。そしてりんはとても可愛いです。早熟で内気で、時に年齢よりも賢く見えますが、ハリウッド映画に登場するようなムカつくマセガキとは全然違う賢さを持っています。二人ともキャラクターとしてリアリティがあり、特にりんについて私はそう思います。この手の作品では子供の可愛らしさを過剰に強調する傾向があり、私もそういう作品が嫌いではありませんが、そこにリアリティは感じません。しかしりんはそういったキャラとは違い、リアリティを感じさせつつも、さらに愛すべきキャラとなっています。きっと作者には自分で子育てをした経験があるのでしょう。
ダイキチとりんの関係は本当に素敵です。繰り返しになりますが、この手のぎこちない親子関係を描いた作品は可愛らしさを過剰に強調する傾向があります。しかしうさぎドロップに関してはそんな事はありません。二人の関係はとても自然で、ダイキチも最初はりんにどうやって接すれば良いのか解りませんが、りんの視点で物事を見てりんの気持ちを理解しようと一生懸命がんばります。りんは最初はあまりしゃべりませんが、次第にダイキチに心を開いていき、最終的にダイキチとよくしゃべる様になります。そこまでに至る過程で生じる二人の微妙なすれ違いは見ていてとても面白いです。
~中略~
作画も大好きです。キャラクターデザインに「萌え」はありませんが、シンプルで可愛らしく、キャラの内面ととても良くマッチしています。うさぎドロップは貴重な宝物のような漫画です。英語版で手に入る他の漫画作品でこれと同じものはありません。
~中略~
この作品は女性向けですが、男性が読んでもきっと気に入る事でしょう。それに加え、ほとんどの年齢層にも受け入れられる作品だと思います。ハートウォーミングで面白くみんなが楽しめる、あなたもうさぎドロップを読めばきっと大好きになる事でしょう。
第9巻 (本編の最終巻)
suki:☆☆☆☆☆
“万人向けではない”うさぎドロップは私にとっては最高の作品となりました。この物語を終わらせるにあたり、二つの選択肢があったと思います。一つは読者みんなが期待した終わり方、もう一つは普通のアメリカ人であれば眉をひそめずにはいられない終わり方です。作者が選んだのは後者の終わり方ですが、私は作者に賞賛を贈りたいと思います。
りんの子供時代はただりんが可愛いというだけで楽しく読む事ができました。しかしりんが高校生になってからは、ただ可愛いだけでは終わらない人生の現実が読者に突きつけられます。こういう結果となるヒントは最初の数巻で何度も繰り返し示されていたのですが、ほとんどの読者は気づかず見落としていた事でしょう。私個人はこの終わり方でまったく問題を感じないばかりか、むしろ大好きです。これを好きになるか、嫌いになるかは読者一人一人の問題です。
物語の後半はともかく、まだ読んだ事がない人はりんの子供時代の話だけでも読んでみるべきです。どんなに凍った人の心も溶かす温かさがあります。