月刊アフタヌーンにて連載中の、沙村広明による無限の住人の英語版コミックです。
無限の住人 Blade of the Immortal 英語版コミック
これまた海外の人が大好きそうなサムライものですね。ジャンプなどの少年漫画ほどファンタジーな要素もなく、かといってそれほど現実的な設定にこだわっているわけでも無い。娯楽として楽しむには最高のバランスの時代劇漫画だと思います。おそらく海外の人が想像するサムライの世界ってこうなんだろうなあ、と漠然と思ってしまいます。
なお英語版を出版する際に作者である沙村広明氏は出版社の Dark Horse Comics に対して、「絵を左右反転しないで欲しい」と注文をつけました。日本では文字が縦書きの場合の本は右開きとなりますが、文字が横書きの英語圏では左開きとなるのが普通です。ですからかつては右開きの漫画を左開きにする際に絵を全て左右反転させて出版するのがほとんどでした(最近では右開きのまま出版されるケースも増えてきました)。しかし自分の作画に拘りを持つ沙村氏はそれを嫌い、左右反転しないオリジナルの絵のままでコマを切り張りして左開きにして欲しいと言ったのです。Dark Horse Comics の方でも作者の意思を尊重してその条件を飲みました。これは結構労力のいる作業なので沙村氏の拘りと共に出版社も評価してよいと思います。
またこの作品の絵を左右反転させると主人公の名前でありシンボルである卍(まんじ)の文字が、ナチスドイツのハーケンクロイツ(卐)と同じになってしまうという問題もありました。日本では卍の文字は仏教に関するものなので特に問題にはなりませんが、欧米ではまずほとんどの人がナチスを思い浮かべます。ヨーロッパ諸国にはこの文字の使用を法律で禁止している国も多く、英語版の冒頭にはこの文字がナチスとはまったく無関係であるとの説明文が掲載されています。英語版コミックの出版にも日本の読者には解らない苦労があるものなのですね。