機動戦士ガンダム THE ORIGIN Mobile Suit Gundam: THE ORIGIN

日本アニメの金字塔、機動戦士ガンダムのアニメをベースに安彦良和が漫画化した、機動戦士ガンダム THE ORIGINの英語版コミックです。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 英語版コミック (ハードカバー)

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 日本語オリジナル版

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 英語版 (ハードカバー)

この作品は有名だと思うのでいきなり英語版の話から入ります。機動戦士ガンダム THE ORIGIN の英語版は当初、北米の翻訳漫画出版大手の VIZ Media が、日本の漫画雑誌の様な形式で2002年から発売していたのですが、これがアメリカのファンに不評であまり売れず、2004年に12巻まで(日本の単行本の内容では6巻まで)発売した所で打ち切りとなってしまいました。

その後何年も THE ORIGIN の英語版の続巻は発売されていなかったのですが、2013年、今度は Vertical という翻訳漫画出版社が新たにライセンスを取得し、日本語オリジナル版で言う所の「愛蔵版」全12巻をなんとハードカバーで発売する事を決定。こちらはアメリカのファンには好評で、現在第9巻の「ララア編」まで発売中。2015年内に最終巻である第12巻「めぐりあい宇宙編」が発売される予定になっています。チープなフォーマットで不評だった VIZ Media版と比較して、コレクション性の高い Vertical のハードカバー版の売れ行きが好調というのは実に興味深い事実だと思います。

上のリンクは Vertical のハードカバー版のみがヒットする様にしてあります。全12巻を買い揃えると結構なお値段になりますが、英語学習用の教材としても、またコレクターズアイテムとしても価値の高いシリーズだと思います。

さらになんと、THE ORIGIN と直接の関係はないですが、富野由悠季監督の手による機動戦士ガンダムの小説の英語版も発売されています。この小説は日本語版だと全3巻で発売されていますが、英語版は全1巻にまとめられて発売されています。こちらの小説の英語版にも2004年版と2012年版の二つのエディションがあり、2004年版は作品内に登場する固有名詞の英語スペルが現在一般的に用いられているものとは違うので(シャアの名前のスペルが “Char” ではなく “Sha” になっている等)、それらが修正された2012年版(赤い表紙)の購入をおすすめします。

機動戦士ガンダム Mobile Suit Gundam 英語版ノベル

またアメリカのAmazonのレビューではこの作品(THE ORIGIN ハードカバー版)に対して以下のような感想が寄せられています。

BlueStar:☆☆☆☆☆
“シャアだ… 赤い彗星だ! 赤い彗星の… シャアだ!!”

機動戦士ガンダム THE ORIGINが456ページハードカバーというゴージャスな仕様になってアメリカに帰って来ました!

~中略~

以前、VIZ Media が漫画雑誌の様なフォーマットで THE ORIGIN の英語版を発売していましたが、今や我々は美しく製本されたハードカバーを手に入れる事ができるのです。第1巻では物語の冒頭から大気圏突入までのエピソードが収録されており、カラーページもちゃんとフルカラーのままで収録されています。巻末には氷川竜介および井上伸一郎によるコメントも収録されています。

物語は非常に良く出来ており、翻訳は完璧とは言えないまでも(1~2か所スペルミスがありました)良い仕事をしていて、日本の漫画の形式に慣れるに従い私でも簡単に読む事ができました。

作画もとても美しく、特にフルカラーのページは手描きの暖かさを感じられてとても良いです。また試作機であるガンダムが土煙の中から現れてザクを撃破するシーンや、ホワイトベースの乗員が通常の三倍のスピードで迫る赤い彗星のザクの接近におののくシーンはまさに鳥肌もので、アニメで同じシーン見た時以上の興奮かも知れないと思ったほどでした。

本のサイズはほんの少し大きめですがハードカバーの装丁を手に持って読む感覚も嬉しく、アメリカで発売された他のどのガンダム作品の漫画よりも良い感じです。ガンダムファンなら絶対に手に入れるべき1冊です。

Shmuffalo:☆☆☆☆☆
“名作の愛蔵版、入手は不可避”

VIZ Media が早々に英語版の発売を打ち切ってから、私はまさか THE ORIGIN の続きが英語で読めるとは思っていませんでした。なので Vertical から英語版が発売されると知った時、それも豪華なハードカバーで発売されると知った時は本当に嬉しかったです。

機動戦士ガンダム THE ORIGINは本当に良く出来た誰が読んでも面白い漫画作品で、アニメシリーズをベースにさらに深く物語を掘り下げており、昔からのガンダムファンに作品を見つめ直す新たな視点を与えてくれます。

THE ORIGIN は単なるアニメのコミカライズ版ではなく、アニメを作ったオリジナルスタッフの一人でもある卓越した技能を持った漫画家によって優雅に描かれています。アニメで描かれた全てのエピソードや世界観は漫画用に新たに再構築されていますが、これも単にファンサービスのためにそうしたと言うのではなく、安彦良和のクリエイターとしての判断によってなされているため、読者も THE ORIGIN の世界に没頭し、登場人物達に共感する事ができるのです。

安彦良和が漫画家だけでなくアニメーターとしても活躍しているからか、コマ割りにはユニークなリズム感があり、単に物語を逐次的に描写するだけの退屈なものではなく、流れる様に物語が進んでいくように計算して描かれています。またこの本に収録されている水彩によるフルカラーページは、思わず見とれてしまうほど美しく、アメリカではあまり目にする事ができない情感たっぷりな色使いがされています。

製本について言及するならば、このハードカバー版は驚異的です。カバーには安彦良和による素敵なイラストが描かれており、タイトル等の文字は小さく書かれています。全てのページは光沢のある質の良い紙に印刷されています(白黒ページに光沢のある紙はあまり合わないと思いますが、フルカラーページでは安彦良和の絵の素晴らしさを際立たせています)。

巻末には著名人によるコメントの英語訳と共に、本編の翻訳の補足説明がまとめられています。英語で書かれた漫画研究、特に安彦良和の作品に言及したものはとても少ないので、巻末のコメントはガンダムという作品および後の世に与えた影響についてあまり良く知らない読者にとって、安彦良和がこの作品に果たした役割を理解するのにとても役立つと思います。

まだ THE ORIGIN の第1巻「始動編」を手に入れたばかりですが、全12巻を買い揃えて私の本棚の真ん中に飾る日が来るのを待ち切れない思いでいます。


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