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Ninja Attack! 外国人のための忍者常識マニュアル

今回紹介するのは日本の漫画の英語版ではありません。日本を含めたアジアの文化を紹介したり名作文学の翻訳版を多く出版している Tuttle Publishing から発売されているガイドブックのAttack!シリーズです。

Attack! シリーズ (Ninja Attack!, Yurei Attack!, Yokai Attack!)

Ninja Attack!

まず紹介するのは “Ninja Attack!: True Tales of Assassins, Samurai, and Outlaws”、表紙には日本語で「外国人のための忍者常識マニュアル」と書いてあります。NARUTOをはじめとして、忍者を題材とした作品は海外でものすごく人気がありますが、実態としての忍者を知っている方はあまり多くはありません。この本は史実や伝承の中の忍者や刺客にスポットを当てて、Yutaka Kondo氏のアメコミ風のイラストともにエピソードを紹介するガイドブックです。

次に紹介するのは “Yurei Attack!: The Japanese Ghost Survival Guide”、表紙には日本語で「外国人のための幽霊ふれあいガイド」と書いてあります。四谷怪談のお岩さんとか、呪いの藁人形とか昔ながらの幽霊の他、巣鴨拘置所の跡地に建てられたサンシャイン60に出没する幽霊など比較的新しい幽霊までもが、Shinkichi氏のおどろおどろしいイラストと共に紹介されています。

最後に紹介するのは “Yokai Attack!: The Japanese Monster Survival Guide”、表紙には日本語で「外国人のための妖怪サバイバルガイド」と書いてあります。最近は、ぬらりひょんの孫夏目友人帳など妖怪を題材とした作品が人気ですが、日本の妖怪の事を理解している方はどれくらいいるのでしょうか。この本では河童やろくろ首などの超有名どころの妖怪の他、泥田坊や二口女などの妖怪までもが、Tatsuya Morino氏のどこかしら水木しげる氏の作風に似たイラストと共に紹介されています。

筆者は依田寛子氏とMatt Alt氏の二人で、何でも夫婦で日本の漫画やゲームなどの翻訳を手がける会社を経営しているみたいですね。お二人は特に日本文化の研究者という訳でもないので、内容的には日本人ならば知っているという事がほとんどでしょう。ですがそれだけに英語でも読みやすく、読み物としても面白いものに仕上がっています。日本文化に興味のある外国のお友達へのプレゼントとしても大変喜ばれるのではないでしょうか。

ダース・ヴェイダーとルーク(4才) Darth Vader and Son

今回紹介するのは日本の漫画の英語版ではなく、ちょっと変わった英語の絵本です。その名もダース・ヴェイダーとルーク(4才)

Darth Vader and Son 英語オリジナル版 絵本

ダース・ヴェイダーとルーク(4才) 日本語訳版 絵本

ダース・ヴェイダーとルーク(4才) 英語版

作品タイトルや画像を見ただけでどんな作品か解るとは思いますが、一応説明します。ジョージ・ルーカス監督の大人気SF映画シリーズ、スターウォーズの主要キャラクターである、ダース・ヴェイダー卿(アナキン・スカイウォーカー)とその息子、ルーク・スカイウォーカーの本編ではありえなかった IF の親子関係を描いた作品ですね。

“もしも、ダース・ヴェイダーが子育てに積極的だったなら”
シスの暗黒卿ダース・ヴェイダーは、反乱同盟軍の英雄たちと戦うべく銀河帝国軍を率いる。だがそのまえに、まず4歳の息子ルーク・スカイウォーと遊んでやる必要がある… (商品説明より)

映画本編では妻が死んだのち暗黒面におちたヴェイダー卿は子育てなどせず、ルークは惑星タトゥイーンに住む親戚のラーズ夫妻によって育てられます。しかしこの絵本では少し過保護で子煩悩なパパとして描かれていて、そのあたりのギャップが妙にほのぼのとしていて面白いのです。ルークとライトセーバーを使って野球をするヴェイダー卿、ルークに玉子焼きを作ってやるヴェイダー卿、フォースを使ってルークをくすぐるヴェイダー卿、ジャー・ジャー・ビンクスのぬいぐるみを欲しがるルークに困惑するヴェイダー卿。親バカなヴェイダー卿と、やんちゃなルークのやりとりに思わずニヤリとしてしまうファンは多いのでは無いでしょうか。物語の中心はスカイウォーカー家の二人ですが、スターウォーズでおなじみの他のキャラクター達も少しデフォルメされた形で頻繁にでてきます。全編を通してほのぼのとした親子関係を描いているのでスターウォーズ作品を知らない人でも楽しめるでしょうが、詳しく知っていた方がより一層楽しめる作品である事は間違いないですね。

英語オリジナル版・日本語訳版ともにハードカバーの64ページ、著者はアメコミ作家のJeffrey Brown氏で翻訳者は富永晶子氏です。絵本なのでほとんどセリフもなく英語学習に役立つかといえば微妙なところですが、中学生レベルの英語力があれば気軽に読めますので日本語訳版を買うよりは英語オリジナル版をおすすめします。ハードカバーなのでお友達やお子さんへのプレゼントとしても良いですし、部屋のインテリアとしても面白いのではないでしょうか。

ちなみにルークの双子の妹である “レイア” もちゃんとでてきますよ。

Yōkaiden 妖怪伝

今回紹介するのは日本の漫画の英語版ではありません。日系カナダ人の漫画家、Nina Matsumoto氏による英語で書かれた日本式漫画(Original English-language Manga)、Yōkaiden(妖怪伝)です。

Yōkaiden 妖怪伝 オリジナル英語版

Yōkaiden 妖怪伝

多くの人々が妖怪を恐れ、なかには妖怪を狩る者も存在する世界。しかし少年、Hamachi は妖怪と人間は仲良く共存できるはずだと信じていた。ある日彼の祖母が謎の死をとげ、それを妖怪の仕業と思った Hamachi は祖母の魂を返してもらいに妖怪の国へ行き、そこで鬼や河童や化け提灯などの妖怪たちと出会うのであった。果たして Hamachi は無事に祖母の魂を返してもらい、元の世界に帰れるのであろうか…という感じの作品です。

登場する妖怪達は日本の民俗伝承や水木しげる氏の漫画でも有名なものばかりで、日本人が読んでも違和感はあまり感じないというか、妖怪について基礎的な事から一から説明される下りが逆に新鮮に感じました。作風は日本の少年漫画のパターンに忠実でいながら、うまく言えないのですがどこか微妙にテイストが違っていて、やはりこれも新鮮に感じましたね。

さて、上述の通りこの作品は英語で書かれた日本式漫画、現地では Original English-language Manga(あるいは OEL Manga) と呼びますが、まだ数はそれほど多くは無いものの、少しづつこの手の作品が発表されています。日本の漫画やアニメを見て育った世代の漫画家さんたちが、海外で着々と育ちつつあるという事でしょうね。ただ残念ながらまだ作品のレベルはピンキリと言った所で、特に作画のレベルが酷い作品も結構あります。この作品はそんな中でも高い評価を受けて数々の賞を受賞した作品で、作画も日本の漫画誌で連載していても遜色の無いレベルに仕上がっています。日本漫画の英語版を読み飽きたという方は、オリジナル英語版の Manga に挑戦してみてはいかがでしょうか。

メガトーキョー Megatokyo

今回紹介するのは日本の漫画の英語版ではなく、フレッド・ギャラガーとロドニー・キャストンという二人のアメリカ人によるウェブコミックのMegatokyo(メガトーキョー)の英語オリジナル版コミックです。

メガトーキョー Megatokyo 英語オリジナル版コミック

メガトーキョー 日本語訳版コミック

メガトーキョー

アメリカ人が描いていると言ってもよくあるアメリカンコミックのようなものではなく、ひょんな事から日本に滞在する事になった小柄で内気なオタクのピロと自信家でコアゲーマーのラルゴのアメリカ人2人が、日常と非日常・現実と非現実の入り混じる東京で暮らすというストーリーになっています。ピロとラルゴは作者であるフレッドとロドニーがモデルとなっていますが物語自体はフィクションで、ピロが日本人女性に恋をしてなんとなくハーレム作品っぽい展開をしたり、守護天使やアンドロイドの少女が登場したりとオタク趣味全開な作品になっています。

作画も日本の漫画を真似たような感じで、はっきり言えば日本の同人レベルにも達していないような下手さですが、本場アメリカのオタク達の間での人気は非常に高く、単行本化された時には北米のグラフィックノベルの売り上げ第3位を記録しました。自らも日本で暮らしたいと思っている北米のオタク達の共感を集めたのでしょうね。

日本人の英語学習者である我々としては、アメリカ人のオタクの生態というか日本に対してどんなイメージ(あるいは妄想)を抱いているのかを知る事のできる貴重な作品だと思います。ある意味において日本のオタクよりオタクっぽいというか、本当に日本のオタク文化は世界で愛されているのだなと実感する事ができます。

2009年5月には講談社から日本語訳版のコミックが1巻発売されていますね。英語が苦手だという方も話のネタとして読んでみたらどうでしょうか。

漫画好きの英語話者が日本語を学ぶための本 Japanese in Manga Land

日本の漫画が海外で人気だというのは今更いうまでもありませんが、漫画を入り口として日本や日本語に興味を持ち日本語を勉強している方はとても多いです。

Japanese in MangaLand

Japanese in Manga Land

英語でブラウジングできる方は海外のアニメや漫画のファンサイトへいくと、日本語を勉強している人の書き込みが多いことに驚かされるでしょう。今回紹介するのは日本の漫画を英語に翻訳したものではなく、漫画を入り口として日本語に興味を持った英語話者達が日本語を学ぶためのテキストです。

上のリンクからAmazonのページを見てみると、初級編(Learning the Basics)・初中級編(Basic to Intermediate Level)・中級編(Intermediate Level)の3冊のほか、単語集(Workbook)が2冊、漢字学習用テキスト(Kanji in Mangaland)がこれまた初級編(Basic Kanji Course Through Manga)・初中級編(Basic to Intermediate Kanji Course Through Manga)の2冊で合計7冊発売されています。

英語話者用に作られた教材ですので、これらを使って英語を学ぶというのはあまり効率の良いものではないと思いますが、英語学習をする過程で外国人にとっての日本語を再確認するという意味では非常に興味深い教材です。Amazon のページではそれぞれ数ページ試し読みができるみたいなので、興味のある方は数冊読んでみると良いでしょう。

また日本語に興味のある英語話者のお友達にプレゼントしてあげるというのも良いでしょうね。同じ漫画という趣味を持つもの同士、そうして互いに英語と日本語を教えあえば、楽しく学ぶことができることでしょう。