日本の漫画の中で最も多くの海外の人たちに読んでもらいたい漫画です。できれば図書館などにおいてもらいたいものです。知り合いに英語圏の方がいたら薦めて下さい。全10巻です。
2007年にウィーンで行われた核拡散防止条約運用検討会議の第1回準備委員会で日本政府代表団がこの作品の英語版を加盟国に配布した事が報道されましたね。その他、フランス語版、ドイツ語版、イタリア語版、朝鮮語版、ロシア語版、スペイン語版、インドネシア語版、タイ語版、エスペラント版、ノルウェー語版などが翻訳されて出版されているそうです。
ただどうしても作者のイデオロギー的な側面が強いのと、教育的な印象が強いためか、諸外国で好まれて読まれているという訳では無いようです。海外の方に薦める時には、漫画の持つ娯楽的な部分と、表現の手段としての漫画の違いを考慮した上でないと逆効果になるかも知れませんね。
個人的には表現の手段としての漫画という意味では、この作品ほど作者の情念というか怨念のようなものが、作画によく表れている作品は無いような気がします。原爆の体験をつづった小説や自伝などは他にもたくさんありますが、それらの作品をもとに他の漫画家が漫画化してもこの作品ほどの迫力にはならないでしょう。作者の中沢啓治氏は自分の思いを読者に完全に伝えるため、この作品をアシスタントを一切使わず全て自分で描き上げたそうです。そういう意味では、芸術的にピカソのゲルニカに匹敵すると言うのは過大評価でしょうか?